中学生でロシアへ渡り、オーストリア、アメリカと海外でキャリアを重ねてきた #14 FW磯谷奏汰選手。今季レッドイーグルス北海道に加入すると、開幕戦での電撃的なゴールを皮切りに、移籍1年目から高い得点力でチームの勝利に貢献しています。今回は、今シーズンの手応えやこれまでの歩み、そして2冠獲得へ向けた思いを率直に語ってもらいました。

――レギュラーシーズンではリーグ2位となる22ゴールを挙げていますが、ご自身の中でこの数字をどう捉えていますか?
本来、新しいチームでの1年目はすごく難しいんです。オーストリアやアメリカ、国内での移籍でもそう感じてきました。でもレッドイーグルスでは、勝也さん(小川監督)からすぐにシステムを説明してもらえたり、選手同士でもよく話せたりして、これまでのような難しさはありませんでした。実際にチームに入ってみてもコミュニケーションが取りやすく、良いパスが来る。自分の強みを引き出してくれる選手ばかりなので、このプレーしやすい環境が、結果的にゴールという数字につながっているのだと思います。
――多くのゴールの中で、特に印象に残っているものはありますか?
ひとつひとつはあまり覚えてはいないんですが、東北フリーブレイズ戦での開始直後のゴールは記憶に残っています。あれは、フェイスオフに負けたあと、相手DFにプレッシャーをかけに行った時に、パスが自分の足に当たって前に出たんです。それを拾ってシュートに持ち込みました。狙っていたわけではなくて、本当にチャンスが来たので『絶対に決める』と思って打ちました。
――試合開始9秒でのゴールですね。あれはホーム開幕戦、磯谷選手のレッドイーグルスでの初ゴールでもありますね。
はい。自分ではゴール前のプレーやボード際でのパックキープが持ち味だと思っていて、ああやって一人で抜け出して決めるような形は、これまであまり多くはありませんでした。ただ、どんな形であれチャンスを作り、『決められるところは決める』ということは常に意識しています。あのゴールに限らず、ベンチでいろいろ考えたり、セットのメンバーと話し合ったことが、そのまま試合の中で形になったときは、すごく面白いですね。
――今季からレッドイーグルスでプレーすることを決めた一番の理由は?
自分を本当に必要としてくれているチームだと強く感じたことが、加入の決め手でした。それにプロ選手である以上、常にレベルアップし続けることが重要です。レッドイーグルスにはスキルの高い選手が多いので、ライバルというわけではないですが、そういう選手たちと一緒にプレーすることで自分も成長できると考えました。『もっと上手くなりたい』という気持ちを絶やさず、自分を磨き続けることが今の自分には必要です。誰と組んでも変わらず、4つのライン全員に力があるのは、チームの強みだと思います。

「歯を折りたくないんで」と、接触のある場面ではしっかりマウスピースを装着する一方で、練習中はくわえたままプレーしていることも。そのことを尋ねると、本人は「無意識ですね」と笑います。きれいな歯並びも含めて、思わず目がいくポイントのひとつです。
――ホッケーを始めた頃のお話も伺いたいのですが、きっかけは何だったんですか?
軽井沢に住んでいて、近くにリンクがあったのでスケートは2、3歳頃から始めていました。両親はスキーをやっていてアイスホッケーとは関わりがなかったのですが、母の『チームスポーツをやらせたい』という意向もあり、小さい頃はホッケーとサッカーをしていました。小学1年生の時に地元の軽井沢でプロの試合を観て憧れて、そこから本格的にホッケーに打ち込むようになりました。弟と一緒にプレーしていたこともあって、自分にとっては自然と続けてきたという感覚ですね。
――中学生でロシアへ挑戦しています。当時はどんな思いでしたか?
ジュニアチームの頃、長野県選抜に入れない時期があって、自分でも『あまり上手くない』という自覚がありました。そんな中、ロシア遠征で現地のチームと試合をしたことが、大きなきっかけになったんです。同い年の選手とは、力の差があり過ぎて試合をさせてもらえず、年下のチームと対戦しても苦戦してしまって。その経験から『もっとレベルの高い環境でプレーしたい』という気持ちが強くなり、ロシア行きを決めました。
――ロシアでの経験で、印象に残っていることはありますか?
最初は言葉もまったく分かりませんでしたが、ホッケーのことなら感じ取れる部分もありました。ただ、プレーの質が本当に高くて、最初の3年間はほとんど試合に出られず、ベンチ外になることも多かったです。その中で、それまであまり意識したことがなかった『どうしたら試合に出られるのか』を自分なりに考えるようになりました。練習のちょっとしたミスでも評価に響く環境だったので、難しさはありましたがメンタルはかなり鍛えられましたし、競争の厳しさを学びました。そうした経験を中学生からできたことは大きかったと思います。
――その後のオーストリアやアメリカでの経験は、どのような転機になりましたか?
17歳で行ったオーストリアでは、当初「U20には通用しない」と言われました。でも自分だけ日本のオンラインの高校だったので時間がありました。周りが登校している間に一人でジムに通い、シュート練習を重ねた結果、少しずつ評価され、最終的にU20でプレーできるようになりました。
アメリカでは、NAHLのトレーニングキャンプで落選したことが転機になりました。オフシーズンでも毎日トレーニングをしているルームメイトの姿に刺激を受けて、『自分ももっとやらないといけない』と痛感したんです。それまではオフシーズンはあまりトレーニングをしていなかったのですが、そこから毎日欠かさなくなり、今では趣味のようになっています。
――現在のご自身の課題はどのような部分でしょうか?
実は結構フラストレーションを溜めてしまうタイプなので、そこは直していきたいです。3月3日のHLアニャン戦では、失点の悔しさからベンチでスティックを折ってしまいました。本当はやってはいけないことですが、それでペナルティをせずに済んだ部分もあったかもしれません。でも今後は、自分の中で抑えてポジティブに切り替えられるようにならなければと思っています。以前は反則が多い時期もありましたが、今はストレスをコントロールできるようになってきているので、そこはこれからも成長させていきたいですね。
――プレーオフファイナルに向けて、チームとしての目標と将来的に目指している個人の目標を教えてください。
全日本選手権優勝、レギュラーシーズン1位、そしてプレーオフ優勝。この3つすべてを勝ち取ることが目標です。『あの年のイーグルスは強かった』と言われるようなシーズンにしたいですし、『イーグルスには敵わない』と思わせたい。個人的には、日本代表としてオリンピックに出場することが夢です。その舞台に立てるように、まずはチームでの役割やひとつひとつのプレーを大切に積み重ねていきたいと思っています。
――最後にワシスタントの皆さんへメッセージをお願いします。
ホームだけでなく、アウェイ会場にもいつもたくさんの方が駆けつけてくれて、どこでもホームのような心強さを感じています。その応援のおかげで、気負わずにいつものプレーができています。チームとしてすべてのタイトルを獲りにいくので、最後まで応援よろしくお願いします。
【プロフィール】
磯谷 奏汰(いそがい・そうた)
生年月日:2001年2月14日
血液型:A型
長野県軽井沢町出身(Okanagan HC Europe(オーストリア)→North Iowa Bulls(アメリカ)→Mason City Toros(アメリカ)→ひがし北海道クレインズ→H.C.栃木日光アイスバックス)