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GKという仕事

GKという仕事#2 小野田拓人選手

 幼い頃からGKという特別なポジションに強く惹かれ、自らその道を選んだ #35 小野田拓人選手。チームのゴールを守るという重要な役割を担いながらも、そのプレーの根底には「楽しむこと」を大切にする姿勢があります。今回は、プロ10年目を迎える小野田選手に『GKの仕事』の魅力や難しさについて語ってもらいました。

――小野田選手は、ホッケーを始めた当初からGKをやりたいという気持ちがあったのですか?

 はい。僕は小学校1年生の時に、自分から「やりたい」と言ってGKを始めました。父が指導者だったこともあり、小さい頃からスケートを履いていて、気づいたらホッケーを始めていたんです。最初はスケーティングも何もわからない状態で、ただゴール前に立っているだけでしたが、友達と遊ぶ時も率先してGKをやっていた記憶があります。

――GKのどんなところに魅力を感じたのですか?

 ホッケーでは、プレーヤーがゴールを決めるシーンが魅力ですが、僕はGKがシュートを止める瞬間が一番かっこいいと感じていました。子どもの頃からよく観ていたNHLの試合でも、いつもGKの動きばかりを目で追っていたんです。当時好きだったサッカーの川口能活選手が、ワールドカップで活躍する姿にも影響を受けて、ますますGKというポジションに夢中になっていきました。

――GKでつらいこと、難しいと感じることはありますか?

 やはりGKは1人しか試合に出られないので、そこがつらいところだと思います。子どもの頃は憧れの存在でしたが、プロの世界に入ってからは本当に難しいポジションだと痛感しました。またGKは、ひとつのミスで失点するリスクがあるので、常に「ミスが許されない」というプレッシャーも大きいです。あまり考えないようにしていますが、負けた時は気持ちが重くなりますし、そういう場面ではつらさを感じます。

――では、やりがいを感じる瞬間を教えてください。

 一番やりがいを感じるのは、完封して勝てた時です。もちろん自分1人の力ではなく、DFやFWが一緒に守ってくれた結果ですが、完封できた時は本当に嬉しくて、「やってて良かった」と心から思えます。大変な部分が多いポジションですが、その分、ロースコアで勝った時の喜びは格別で、「自分の仕事を果たせた」という大きな達成感を得られます。

リンクではクールなプレーが持ち味の小野田選手。インタビューでは表情豊かに語り、プレー中とはまた違う親しみやすい一面が見えました

――GKは孤独なポジションだと感じますか?

 そう言われることもありますが、そうは思いたくありません。ホッケーはチームスポーツなので、プレイヤーたちもGKが孤独だとは思っていないはずです。僕も彼らを信じていますし、FWが点を取ってくれるから、自分はしっかり守る。1人で戦っているわけではなく、全員で守って、点を取り、勝つ。そんな気持ちでプレーしています。

――試合前や試合中に心がけていることはどんなことですか?

 試合前の特別なルーティンはなく、普段通りアップをして本番に臨みます。大事にしてるのは、試合開始直後のワンプレーです。最初のプレーがうまくいくかどうかで、そのゲーム全体の流れが変わるということを経験してきたので、各ピリオドの始まりや失点直後などは、特に集中して丁寧にプレーするようにしています。

――ピンチの場面や失点直後のメンタルコントロールについて教えてください。

 失点後に、例えば1本シュートを止めたら「よし、OK」といった感じで、小さな成功を自分なりに見つけるようにしています。シュートに限らず、何か良いプレーができたら自分を褒めるような感覚で、ピンチの時こそ、成功を探してプレーするようにしています。失点をすると「今のは止められたんじゃないか」と引きずってしまうことがあるので、できるだけ早く気持ちを切り替えることを大切にしています。

――日々のトレーニングで重点を置いていることは何ですか?

 リバウンドのコントロールはGKにとって非常に重要です。リバウンドをしっかり抑えることで、DFの負担を軽くし、失点のリスクも減らせます。毎日の練習前には、リバウンドコントロールを確認するアップを取り入れていますし、通常のシュート練習でも、うまくできた点や課題を意識しながら、改善につなげるように取り組んでいます。

――子どもたちや若手のGKに向けて、成長するために大事なことを1つ挙げるとしたら?

 それは、「楽しむこと」です。僕自身、ホッケーを始めた頃はすごく楽しかったですし、もし楽しんでいなかったら、ここまで長くプレーできなかったと思います。「よく続けてきたな」と思う部分もありますが、自分がどれだけ楽しめるかが、一番大事。そのあとに技術。「うまくなりたい」という向上心も、まずは楽しむ気持ちがあってこそだと思います。

――自身の強みと来シーズンに向けての目標は?

 あまり感情的にならず、波の少ない安定したプレーが強みだと思っています。来シーズンは、より多くの試合に出場して、大事な試合を任せてもらえるメインのGKになることが目標です。それと、ここ数年はチームとしてタイトルをとれていないので、次こそは三冠を達成したい。その舞台に立てるようにしっかりトレーニングに励みます。

――最後にワシスタントの皆さんへのメッセージをお願いします。

 特にクラブチーム化してから、皆さんの応援がより一層特別なものに感じられるようになりました。試合会場で声援を聞くと、僕たちに期待してくれている気持ちが伝わってきて、心強いですし大きな後押しになっています。ワシスタントの皆さんの応援に応えるためにも、タイトルを必ず獲得して、喜びを一緒に分かち合いたいです。これからも僕たちを信じて、熱い応援をよろしくお願いします。

【プロフィール】
小野田 拓人(おのだ・たくと)
生年月日:1992年5月2日
血液型:O型 恵庭市出身/島松小学校一恵北中学校一清水高校一中央大学一王子イーグルス